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QGIS

第3回 座標参照系(CRS)とは? - プロジェクトの CRS を地理座標系にすると -

今回のテーマ

 QGIS の座標参照系CRS:Coordinate Reference System)の設定は、大きく分けて「① データ(レイヤ)の CRS 」と、「② プロジェクトの CRS 」の2つがあります。前回の第2回では、「① データ(レイヤ)の CRS 」について、正しい CRS の選択方法と、もしデータに間違ったCRSを選択してしまうと QGIS ではどのようなエラーが出るのかについてご紹介しました。

 今回は「② プロジェクトの CRS 」についてご紹介していきます。QGIS のプロジェクトの CRS は、データ(レイヤ)の CRS と違い、必ずこれが正解というものはありませんが、設定するプロジェクトの CRS によってデータの見え方が変ったり、距離などを測る際に値に違いが出てきます。表示するデータによって適したプロジェクトの CRS はありますが、今回は見た目の違いが分かりやすい例で比較をしながら、プロジェクトの CRS の設定と QGIS 上での見え方の違いについて確認していきます。

プロジェクト CRS とデータの見え方について

はじめに、QGIS のプロジェクトを開いてデータを表示していきます。表示しているデータは投影座標系の「JGD2000 / 平面直角座標系 第IX系」で、出典はe-Stat 政府統計の総合窓口 (外部サイト)の東京都墨田区の小地域データです。

下表の上段 A のプロジェクト CRS は、データと同じ投影座標系の「JGD2000 / 平面直角座標系 第IX系」です。下段 B のプロジェクト CRS は、地理座標系の「JGD2000」です。

※ 地理座標系と投影座標系の違いについては、 第1回 、 第2回 の記事をご確認ください。

今回は比較のために、A のプロジェクト CRS を投影座標系に設定したものを例に載せておりますが、QGIS 上の見え方が異なるだけで、A と B どちらかのプロジェクトの CRS が間違っているわけではありません。

A 、B の図で表示している墨田区の境界データの CRS は、どちらも同じ「JGD2000 / 平面直角座標系 第IX系」です。データの CRS は同じですが A と B の図を比較すると、B の方が横長に見えます。

次に、A と B の間でなぜこのような違いがあるのか、図を見ながらご説明していきます。下図はメルカトル図法を例に、緯度が変わると、経度1 度の間隔(東西方向の間隔)も変わることを示した図です。赤道付近では経緯度の比は1:1ですが、高緯度になるにつれて緯度1 度に対する経度1 度の比が小さくなっています。図中の経緯度の比から、経緯度は度分秒の1 度という値でも、メートルなどの他の単位に置き換えると、場所によってその距離は異なる値になることがわかります。たとえば、赤道付近の経度1 度は約111 kmですが、東京の緯度36 度付近では約90 km (*) と、地球上の距離に大きな違いがあることがわかります。

(*) 経度の距離は、国土地理院 測量計算(距離と方位角の計算) を利用しています

(図の出典:「二訂版 QGIS の基本と防災活用」橋本 雄一 編(古今書院) 図2-5 メルカトル図法 に一部加筆)

地理座標系を QGIS で表現する(イメージ)

前述では、地球の形状は高緯度になるほど経度の間隔が小さくなることを確認しました。次に、QGIS 上で地理座標系の1 度はどのように表現されているのか確認していきます。QGIS 上では、緯度の1 度と経度の1 度が同じ距離で描画されるため、高緯度になるほど経度が東西に引き伸ばされたような見た目になります。下図の例では、緯度に合わせるため、実際は経度が 1⁄2 だったのが QGIS 上では 1 に引き伸ばされます。
前半に A と B で比較した墨田区付近の緯度は約36 度で、地球上では中緯度に位置しています。下図の 1:2 の位置よりも緯度は低いですが、なぜ B が A と比較して東西方向に引き伸ばされたように見えたのか、これで確認できました。

次回は

今回は「プロジェクトの座標参照系(CRS)」をテーマに、投影座標系と地理座標系を設定した場合の比較と、地理座標系を設定した場合、QGIS 上の見た目にどのような違いがあるのかご紹介しました。次回は、QGIS 上で距離を測る際の CRS との関係についてを予定しております。

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